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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)2370号 判決

原告 竹内敬治

右訴訟代理人弁護士 森真一郎

同 雨宮勘四郎

同 馬場直次

同 伊藤徹雄

被告 内山基

右訴訟代理人弁護士 原後山治

主文

被告は、原告に対し金七一八、〇〇〇円および内金六六四、〇〇〇円に対する昭和三七年五月一六日から、内金五四、〇〇〇円に対する昭和三八年二月五日から完済に至るまで、年六分の金員を支払え。

訴訟費用は、被告の負担とする。

この判決は、第一項にかぎりかりに執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

請求原因事実については、当事者間に争がない(ただし、本件各手形の振出日付が振出当時白地であつたが、これが、高橋平あるいは原告により、補充されたものであることについては、証人高橋平の証言により認められる。)。

そこで、抗弁一について按ずるのに、証人高橋平≪中略≫を合わせ考えると、原告が飯塚昇の代理人たる高橋平から本件各手形を引渡によつて譲渡を受けたのが昭和三七年一月末から同年二月九日頃までの間であることおよび被告が抗弁として、飯塚と被告間に本件123および5の手形債務が免除されたと主張する債権者会議が開かれたのは同年二月一七日であることが認められるから、被告主張の債務免除の事実の有無を問うまでもなく、この抗弁は理由がないといわざるを得ない(なお、附言するに、高橋証言および村上証言によれば、債務免除の合意がなかつたことが認められる。)。

つぎに抗弁三の1について検討する。

訴訟外の訴取下の合意の効力については、見解の分れるところである。そして、この合意が訴訟法上訴の取下としての効力を有しないこともちろんであるが、これを直ちに無効とすべき理由はない。当事者間での任意解決を許容する請求に関するものである限り、私法上の合意として有効であつて、原告は、訴取下の義務を負う結果、原告の請求は当該訴訟に関する限りにおいて、審判による解決をしないことをその属性とするに至るもので、結局かような請求は、いわゆる権利保護の利益を欠くものというべきである。

ところで、本件において、被告本人尋問の結果中には、右抗弁に副うかに考えられる供述部分があるけれども、該供述部分は、証人高橋平の証言および原告本人尋問の結果に照らして直ちに信用しがたく、他に右抗弁事実を肯認するに足りる資料もないからこの抗弁も採用できない。

抗弁二の2については、抗弁一について述べたと同様の理由により採用できない。

してみれば、原告の請求は、理由があるからこれを認容し、民事訴訟法第八九条第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 菅本宣太郎)

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